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立ち入り禁止の看板がボロボロになって立ち塞がっていた。何者かが壊そうとしたかのような印象を与え、禍々しい渦がその奥から立ち込めるようだった。
禍々しい傷跡だ。痛みは両腕を貫通し、全身を恐怖で支配した。
姉さん、と幹明は幸世の白と黒のチェックの入った緩い上着の裾を引っ張る。
「こんな所で住みたくない」
幸世は毅然とした態度で弟(?)を見下ろした。幸世の身長は15歳の幹明より30センチ程高く、傍目大人と子供だ。実際、幹明の頭は10歳辺りで成長を辞めていたのかもしれない。幸世の方が何倍も強く、何倍も頼り甲斐がありそうに見えた。
「こんな所とは、良い言い草だな。お前にとっても理想の地になると私は判断した上で連れて来たのだ。この森を1人で抜けようとすれば、確実に狼の餌食になる。どうする?幹明」
幹明は考えもせず、即答した。
「俺には姉さんだけなんだ」
幸世が幹明の頭をポンポンと軽く叩く。
「付いて来い」
立ち入り禁止の看板を幸世は、何度も蹴飛ばした。5撃目ぐらいで看板が大破する。幸世の膝からも血が滲んだが、幹明は心配無用であることを悟っていた。
2人は手を繋いで、森の中を歩き、深い霧を30分程泳ぐと、堂々とした門に行き当たった。
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