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幹明は黄金の瞳を見つめ、しばらくして視線を落とした。ずっと見ていたら黄金の渦に飲み込まれそうな感覚に陥る。あれは爬虫類の目だ。何も考えていない獰猛な生き物の目だ。
「き、君、名前は?」
幹明は自分でも情けない程、不自然に上ずった声で少女に尋ねた。食欲よりももっと強い要求に支配された。もっとこの子を知りたい。
少女は幹明の側まで穏やかな歩調で歩み寄り、おもむろに背伸びして、幹明の頬を撫でた。幹明はミステリアスな快感に溺れ、少女を守りたいと心の底から思った。
ホームは広い。何もかもが高級品だ。
少女がポツリと口を開く。
「大獄火李奈(オオゴクカリナ)。それが私達の名前」
幹明は撫でられた頬に手をやった。とても冷たい感触が残っている。それでも、謎の姉がいれば、謎の妹もいてもいいだろうと楽観視していた。
火李奈がくすぐるように笑った。
「幸世さん、お兄様、着いて早速ですが、長旅でお疲れと見て、お食事を取られてはいかがですか?」
いつの間にか、幸世が幹明の背後に突っ立っている。幸世はいつもの冷静な様子で火李奈を見つめ、お嬢様と言った。
「私はそのような食の好みはありません」
幹明は困った顔で幸世を見たが、食欲には負けた。
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