プロローグ

2/6
159人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
ファンファンファンファンファン── パトカーのサイレンがけたたましく辺りに響く。 ここは都内某所の裏路地。 時刻は13時50分──まだ真っ昼間だというのに、この一帯は警察で埋めつくされ、異様な空気に包まれていた。 「こりゃあ……ひでぇな」 「見事にバラバラだな」 「こ、こここれは……!?うっ、うっぷ!!」 「おいおーい。吐くならトイレで吐いてこい。……ったく。いい加減慣れろよ、あいつも……。もう20件目だぞ」 「まあ、慣れろっつー方が無理な話だ。あんなんいつ見たって胸くそわりぃ」 「はっ!!よく言うぜ、トシさん。あんたおにぎり食いながら『あれ』見てんじゃねぇか」 「ははっ!!まあまあ。……それより、この犯人、見事な位、証拠がねぇな」 「ああ、しかもいっつも裏路地だ。争った形跡なんて一切無いしな」 「……ふう、もう昼だし、飯食いに行くか!!」 「トシさん。あんた太るぞ?あ、松壱屋行こうか」 今回で20件目になる、バラバラ殺人事件。 警察は一連の事件を1人の犯人がやっていると考えている。 殺害された人物たちには関連性が無く、事件は解決しそうになかった。 が、しかし。 この事件の一週間後、犯人は捕まった。 ──180人という大人数の犠牲を払って。 彼は小学校に白昼どうどう入り込み、三年生とその三年生を担当している教師全員を皆殺しにし、その後学校から出るところで身柄を確保された……。 一人だけ生徒が救助されたが、彼は泣きじゃくっていて、心療内科にお世話になるそうだ。 返り血に染まった彼の身体は不気味な雰囲気を醸し出していた。 凶器は日本刀。 それは1000万円を超える代物だ。 警察の事情徴収に対し、彼は、 「あいつのことを睨んだ奴を殺しただけだ。別にどうという訳じゃない。」 と供述した。 なお、薬物反応は出ておらず、精神状態も極めて安定している。 『あいつ』は、生き残った生徒である可能性が高いと見られている。 そして書類送検され、その年の末に行われた最高裁の判決で死刑に決まった。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!