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それから僕は彼女が気になって仕方なくて、仕事をこなしながら目の端で見てしまっていた。
きっと店長が変な事を言い出したからだ。
いや、きっと僕の中の何かがそうしたからだ。
じゃないとこの忙しい時にそんな事を考えない。
集中力が散漫している。
彼女に、集中してしまっている。
彼女は冷たいビールをごくごく、と二度喉を鳴らしながら飲み、はーっ、と炭酸の刺激を吐いた。
それから焼き餃子に箸をつけ、まずはお酢だけに、ちょんちょん、とつけて、少々大き目のそれを半分齧り少し上を向く。
もぐもぐ、と咀嚼する頬は膨らんでいて、口の端が上がっている。
全部飲み込む前にまたビールを少し飲み、ごくり、と飲み込んだ喉が止まる。
それからまた、ふーっ、と息を吐いた。
「お待たせしました。ヤキ、アゲ、ライスです。ごゆっくり」僕は別のお客にそう言い、トレーを脇に抱えてまた移動しつつ彼女に目をやる。
次は水餃子か、ふーふーっ、とすぼめた唇から息を吹き、今度はそれを一つ、全部口に含んだ。
少々熱かったか、口に手をやり、噛む前に口の中でそれを冷まそうと動きが止まっている。
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