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私がドアの鍵を、内側からかけようとしたとき。
外側から、乱暴にドアが開いた。
「わ、ちょっと!誰っ!」
焦った声を上げた私を庇って、前に立ちはだかった父。
その父は、私の目の前で、鋭利な刃物によって胸を貫かれた。
声を上げる間もなく、父は崩れ落ちて。
もう一人、私の前に出たのは母だった。
同様に、一瞬にして母も倒れる。
―――次は、私……。
肝心なときに足が竦んで動けない。
せっかく、父と母が与えてくれた隙なのに。
犯人と目が合った。
私とさほど背の変わらない、細身の男。
目が、奇妙な光を放っている。
その視線が、ドアの向こうへと逸れた瞬間、私はドアに向かって走り出していた。
いつもより重く感じるドアがもどかしい。
早く、早く開いて……。
後から犯人が追ってきた。
辺りは暗くなっていた。
私は、向かいの家へと走る。
「助けてください!お願いです。開けてください!助けて!!」
インターフォンを連打した。
声の限りに叫んだ。
でも、ドアは開かない。
犯人が門まで迫っていた。
「開けてください!!!」
失敗だった。
向かいの家は、留守の時も防犯のために、電気をつけているのだった。
突然、背中に鋭い痛みが走った。
犯人は、いつの間にか私の真後ろにいたのだ。
それでも、どこにそんな力があったのか分からないが、私は走って庭を回って逃げ出した。
両親の愛情が与えてくれた、最後の力を振り絞って。
やっと道路に出た。
その時、向こう側から車が来たのだ。
助かった、と思った。
この日、ひとつだけ運がよかったのは、その車がパトカーだったことだ。
安堵して地面に崩れ落ちた私に止めを刺すことを、それが妨げた。
犯人を逮捕することはできなかったが、私はすぐに病院に運ばれた。
私は意識を失って、でも、一命を取り留めた―――
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