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こうして弱っている時は、人の気配があることで安心感に包まれるものだ。
水道の蛇口を止める音、ガスレンジに着火する音、野菜を刻む音。
ありふれた生活音がこんなにも心を穏やかにさせるなんて思いもしなかった。
静かに瞼を閉じると、思い浮かぶのは美瑛にいる父と母の笑顔。
親の願いも叶えてやれず、あげくの果てには帰省すら出来なくなった。
親父も今年で還暦を迎えるだけに、孫でも連れて帰れたら会えなかった時間を取り戻せるのだろうけれど、俺にその甲斐性はない。
「恋する権利……か」
冴子が龍都とやり直してくれたら、俺はこの罪の意識を消し去ることが本当に出来るのだろうか。
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