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―――2009年夏。
残暑厳しい9月の月曜日。
週明けには必ず戻っていた旭が初めて帰宅しなかった。
そのまま出社したのだろうか。
まさか途中で事故にでも…。
心配になった茜は旭の携帯に電話をかけ、メールも送ったが返事は返って来なかった。
元々旭は、業務に入ってしまうと私用電話には出ないこともある為、それならばいいのだが、でも…と嫉妬よりも不安が先に立ったけれど、妻である自分が夫の会社に『主人は出社してますか?』などと聞く訳にもいかない。
どうしよう…。
このまま帰って来なかったら…。
不安に眠れぬ夜を過ごした翌、早朝。
旭からメールが届いた。
―――『茜。ごめん。俺、帰りたい。茜のいる家へ。今、高山市の蓮池工房にいる。』
あの人が!
旭が私を呼んでいる!
茜はすぐさま高山市蓮池工房の所在地を調べ、住所を控え、幾度も押し間違う震える指でカーナビに登録するとゴルフを発進させた。
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