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女が座っていた。
その隣には赤い服の男が寝転んでいた。
(…旭?)
また1歩、茜が囲炉裏に近づいた。
男と女の全貌が見えてきた。
女の手には血まみれの斧。
そして真っ赤に染まった旭が…。
『やめてぇっ!』
茜が部屋に飛び込んだ。
『旭っ!旭―――っ!』
首元がザックリと割れ、旭はピクリとも動かない。
女も返り血を浴び、真っ赤だった。
茜は座椅子にもたれ、虚ろに宙を見上げている女に飛びかかった。
『どうして?どうして?』
その言葉に我に返った女が茜を振り払おうと抵抗する。
『愛してるって言ったのに!
嘘つきっ!』
叫びながら、女は茜に向かって斧を振り上げた。
『あんたなんか!
あんたなんか子どもも産めないくせに!』
そのひと言に茜の心が切れた。
茜は力ずくで女の手から斧を取り上げた。
そして両手で握り締め、頭上高く振りかざす。
その形相に女がたじろいだ。
『お願い。やめて…。
彼の子どもがいるの…』
―――茜の両腕が真っ直ぐに振り下ろされた。
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