9 Baby Blue(限りなく優しい色)

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あれから半年と少し。 類が見つめる水平線には幾度となく陽が沈み、そして同じ数だけ昇った。 空と海は常に溶け合い、仲睦まじく色を変え、類の心のモノクロスクリーンに繰り返し繰り返し色を重ね続けた。 そんな類の様子を見守っていた医師ウィリアムの指示により、ニューヨークからは作曲の仕事が入るようになっていた。 テレビCM、他者への楽曲提供、映画音楽など様々だったが、これはすべてウィリアムとCRISISが考え出した言葉の要らないリハビリだった。 「さて、ルイ。 新規の仕事も入ったことだし、そろそろ始めてはどうだ? 夕食まではたっぷり4時間あるぞ?」 「はいはい。やりますよ~。 …ていうかさ。 ウィリーはいつからマネージャーになったんだ? 確かあんたは医者だよな?」 「最近は医者も大変なんだ。 二足のわらじを履かないとな、やっていけないんだよ」 「よく言うよ」 オーバーアクションで首をすくめた類がギターを膝に乗せ、そして、 「ありがとう、ウィリー。 感謝してるよ」 「わぉ。 明日はハリケーンでも来るんじゃないか?」 ウィリアムがテラスデッキから空を見上げる。 「あんたも素直じゃねぇな~」 「ルイにだけは言われたくないな」 2人が笑った。
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