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「ごめんなさい、わかりません……」
素直に謝る私に、千裕さんがまた困った顔をして見せた
「……ごめん、花音のせいじゃない、俺がダメなんだ」
…………繋いだ手にキュッと力が入ると、千裕さんが私の視線から逃れる様にハンドルに額をつけて顔を隠した
私のせいじゃなくて俺がダメ……
もうこれは私が考えても答えは出てこないだろう
かすりもしない答え合わせに気を揉むより、もうここは千裕さんの言葉を待とう
そう思い私は黙って次の言葉を静かに待っていた
・・・・・・・・・・
「……花音は自分が思ってるよりうんと魅力的ないい女なんだよ」
長い沈黙の末にようやく紡がれた言葉がこれ……
「……ハァ?」
いやいや、なになに?
何なの今のは……
魅力的ないい女って……
アハハ……やだ~ちょっとどうしちゃったのよ、千裕さん視力落ちた?
あまりにも突拍子もない事を言われ、思わずフフッと笑ってしまう
「千裕さん、大丈夫ですか?
もしかしてどこか具合悪いんじゃ……」
具合悪いんじゃないか……と言いかけたが、ふと見上げた千裕さんの顔を見て言葉が止まってしまった
ハンドルに額をつけたまま私を見つめる千裕さんは、やはりいつもと違って大真面目
だけどどこか心許ない雰囲気に、私の中の母性がキュンと疼いた
「また花音と一緒に仕事出来たらいいと思ったのは本当だよ
もちろん、柊の事は一番に考えた……
だけど、俺達は子育ての環境にすごく恵まれてるだろ?
喜んで面倒見てくれると言ってくれる両親がいて、しかも家はすぐ隣、柊もよく懐いてる……
週に2、3日なら花音のいい息抜きにもなるかもしれないし……」
そこまで言って千裕さんはまたハンドルに顔を伏せてしまった
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