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…………やだ……千裕さん、何か可愛いかも……
何故にそんな弱気な感じなの?
いつものグイグイくる感じに慣れてしまってる私には、目の前の千裕さんが別人の様に思えてきた
「いや、ごめん、それは建前だな
本当は花音をもっと独り占めしたかったんだよ」
「え……?」
建前で、本当はもっと……?
意味がよくわからずに首を傾げて聞き返す私に、チラッと見上げただけの千裕さんがそのままの姿勢で言った
「つまり……俺は柊や実家にまで嫉妬してるって事」
…………はぁ?どういう事だろう……
「千裕さんが柊や実家に嫉妬……ですか……
…………何ででしょう?」
「フッ、花音は本当に鈍いね、まぁそこも可愛いんだけどね
要するに花音が仕事辞めて柊が生まれて、それからは育児やらで2人の時間が減っただろ?」
確かに仕事を辞めてしまえば千裕さんと一緒にいる時間はガクッと減ったよ
朝『行ってらっしゃい』と送り出してから夜『おかえりなさい』と迎えるまで離れ離れ……
普通は当たり前の事だけど職場が同じだった私達にとって、初めのうちはかなりもの寂しい感じがしたものだ
「……でもそれは……」
「わかってる、そんなのは当然の事
たいていの家庭は夫が働き妻が家を守る
妻は家事をこなしながら育児もして、夫の健康や面倒までも見なくてはならない
花音の場合、舅姑との付き合いもあるし、時には実家の家事までやらされて……
花音が一生懸命やってくれてるお陰で、俺はただひたすら仕事だけをしていられる……
それはちゃんとわかってるし、感謝してる
そうなんだけど……」
……そうなんだけど……どうなんだ?
この後何を言われるんだろう……
私はドキドキしながら黙って続きを待った
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