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言い終わった後千裕さんがゆっくり顔を上げた
「うざくてごめんな……
さて行くか!マジで初日から遅刻じゃダメだよな」
そう言うともう一度ギュッと手を握りしめ、離す間際にスッと手の甲を撫でた
「千裕さん」
手から温もりが消える寂しさに思わず彼の名を呼んでいた
「ん?」
前を見たまま返事をする千裕さんの横顔を見つめ、さっきまで感じていた右手の温もりを確かめる様に左手を重ねて私は口を開いた
「柊に嫉妬だなんてちょっと驚いたけど、でももし逆の立場なら千裕さんの気持ちよくわかります
だからウザイだなんて思ってないです、むしろ嬉しいです
そんなにまで千裕さんが私を想ってくれてるなんて、嬉しすてなんか浮かれちゃいそうです」
さっきの千裕さんを思い出すと胸がキュンとなる
上司と部下から同居人になって……想いが届いて恋人になって夫婦になった
そして今私達は子を持つ親となった
幸せすぎるくらいの幸せを千裕さんは惜しむ事なく全力で私に与えてくれる
千裕さんに出会えてよかったと心の底から思える今日に毎日私がどれだけ感謝している事か、きっと千裕さんは知らないよね
「ありがとな……でも花音、俺は花音が思ってるよりもずっとずっとお前の事を愛してる
前にも言ったけど、どんな事があっても離れる気は無いし離してやるつもりもない
もし逃げるなら……追って掴まえて閉じ込める
どんな事があっても一生俺の隣にいてもらう」
熱のこもった眼差しを向けられ、ドキドキと心臓が騒がしい
「はい、望むところです
そして今の言葉、そのままそっくり千裕さんにお返しします」
私の言葉に顔を見合わせ笑い合うと、大きな通りの向こうに会社のビルが見えてきた
「じゃ、奥さん今日からまたよろしく
社内では旦那が嫉妬でおかしくならない様に可愛さは封印で頼むよ」
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