番外編⑫ **ほんの少しだけ未来の話**

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「なんでもないよ 花音は可愛いなって思ってただけだよ」 (……もうやだ千裕さんたら…… 何を突然サラッとそんな恥ずかしい事を……) 何かにつけて私をやたらと過大評価をする千裕さんに、申し訳ないやら恥ずかしやら…… なんだか身の置き場に困ってしまうよ 「ところで柊は1日おとなしくしてたのかな?」 パソコンの電源を落としデスクの上を片付け始めていると、千裕さんがふと父親の顔を覗かせた こんな時、 "あぁ、私達は夫婦でもう子を持つ親になったんだな" と改めて実感する そして、それと同時になんだか微笑ましくて、照れくさくて自然と笑みがこぼれてしまう 「ふふ、大丈夫みたいですよ お昼にお義母さんに電話したら、凄くいい子で全く手がかからないって言ってましたから」 そうなんだよね、これは親のひいき目かもしれないけど、柊はとっても穏やかな子なんだよね キーキー言わないしギャーギャー泣き叫んだりもしないし…… 「そうか、偉いな まぁ、大好きなポンがいるからきっと夢中になって遊んでるんだろ だけどポンはいい迷惑だな、アイツももう中年犬だから柊相手じゃヘロヘロじゃないのか? 可哀想だから今度高級ササミジャーでも買ってやるか」 そう言って千裕さんがクスッと笑った 最近千裕さんはポン助に優しい あれほど敵対心むき出しにしていたくせにどういう心境の変化なんだ 「そうですね、ポン助にはたくさん柊のお相手させちゃってるから今度お礼しないといけないですね だけど千裕さん、最近はポン助といい感じじゃないですか?凄くポン助に優しいし……」 遠まわしに訊ねてみると、意外にもアッサリと答えが返ってきた 「え?だって最近のポンは柊でいっぱいいっぱいだろ? そのお陰で俺は心置き無く花音を独り占め出来るからな だからアイツは今の所俺の敵じゃないよ」
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