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「花音、俺が本社に戻ってきたら結婚しよう」
確かに一年前にされたプロポーズ……
あれから一年、私はこの約束のもとに寂しさにも耐えひたすら仕事に打ち込み、唯一の楽しみと言えば同期の彩夏と飲みに行く事と、最近仲良くなったアパートの大屋さんちの犬のポン助と遊ぶこと
ポン助はポメラニアンで四才の男の子
たぬきに似ているからという理由でポン助と名付けられたんだって
って、今はポン助は置いといて……
あれあれ?私、今何してたんだっけ?
一年ぶりに彼が出向先の博多から帰ってきて……待ち合わせして……そうそうご飯食べようっていつも行ってたオムライスの美味しい洋食屋さんに入ったんだよね
チラリと顔を上げると目の前には愛しい彼が私を見つめている
でもなんか違和感……
これって何だろう……?
ようやく手の届く距離にいるというのに、なんだか浮かない顔をしているのは気のせい……?
ちょっと困った様な顔して私を見ているのには何か意味があるの?
言い知れぬ不安が私を襲う
会えて嬉しいはずなのに、この先の言葉を聞きたくない……と心が訴えている
「花音……俺……」
わっ、ダメダメその先を聞いちゃダメだ
絶対にいい話なんかじゃない
そう思っているのに、目の前の大好きな人が今にも泣きそうな顔で私を見つめているから……
きっと、話を切り出す彼だって覚悟がいるはずだ
ふぅ……と心の中で小さな溜め息を吐き出すと、真っ直ぐに彼を見つめて微笑む
「な~に、賢人?」
「花音……俺と別れて下さい」
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