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「花音、聞いてる?」
賢人に名前を呼ばれてハッと我に返る
「え?あ……聞いてるよ
や、ごめん聞いてなかった……
えっと、綾だよね?……」
綾の名前を出した途端、胸がチクリと傷みだす
「あぁ……うん、えっと、綾……松島が半年前に俺に相談があるってわざわざ訪ねてきたんだ、その相談の内容はちょっと花音でも話せないんだけど……
俺さ彼女の悩み聞いて力になりたいって思ったんだ
で、その後も松島はちょくちょく訪ねてきてくれて……初めのうちはホテルに泊まってたんだけど……そのうち酔ってそういう関係になって……それからは毎回うちに泊まる様になったんだ」
…………もう、やめて
そんな話聞きたくない
私だって出来ることなら賢人のとこへ会いに行きたかったよ
でもやっぱり福岡は遠いし、交通費だってバカにならない
一年、この遠距離に耐えればずっと一緒にいられるんだから、会いたいけど我慢だよ!結婚資金のために交通費は出来るだけ抑えようね、って二人で決めたから……
それに一年間を乗り越えられない様なら、この先どんなに取り繕っても長くは続かないよ、って賢人言ってたよね
だから私、悲しい事があっても、辛い事があっても、賢人の顔見て賢人に抱きしめて欲しくても、ずっとずっと我慢してたのに……
綾だって私に会っても何も言ってくれなかった
普通に顔合わせてもいつも通りだったよ
二人が私の知らないところでそんな風になってるなんて……
あーあ、知らなかったのは私だけって事か……バカみたい
「俺達来月結婚するんだ」
「来月?…………ふぅ~ん、ずいぶん急なんだね」
もうどうでもいいや、今の私はまともに賢人の話を聞いてられる様な精神状態じゃないの
ぶっきらぼうに言葉を返す私を賢人は少し驚いた様に見ると、意外そうな顔で言った
「花音のそんな顔初めて見た……」
私だって感情ってもんがあるのよ
ヘラヘラ笑って聞いてられる訳ないでしょ!バカじゃないの!?
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