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「……っ……身体……大丈夫なの?」
恨み事の一つくらい言ってやりたい、そう思っていたのに……
フッ、何よ……やっぱり私はヘタレなんじゃん!
だって出てきた言葉は普通に身体を見舞うありきたりな言葉、しかも大丈夫なの?って何よ
大丈夫じゃないからここにいるんじゃない……
勇気を振り絞って見上げた先に、なんとも言えない表情で私を見つめるあの人の姿が視界に飛び込んできた
そして私の目に映ったあの人はあの頃とは全く違う、あの頃の面影なんかどこにも残ってない姿で弱々しくベッドに横たわっていて……
まるで会った事も、見た事もない全く知らない人の様だった
本当にあの人なの……?
もしかしたら同姓同名の全くの別人なんじゃない?
おばちゃんの早とちりだったりして……
だって今私が見ている人は、病気のせいで骨と皮しかないんじゃないかってくらいに痩せこけ、肌の色はどす黒く髪は真っ白……
肉の落ちた顔は目が窪んで頬や唇にも色味がない
もう、今すぐにでも死んじゃいそうな人だよ
もしかして私夢見てるの?
だって私、こんな人知らないもの……
・・・いや、違うか、多分……いや間違いなくこれは現実
私の目に映ってるこの人こそが、私が今までずっと憎み続けてきた人に違いないんだ
どうしてだろう……私、今凄くショックを受けてる
憎くて仕方なかったあの人がようやく死んでくれるっていうのに……
良かったじゃないか、ずっとこれを願ってたんじゃないの?
なのにどうしてこんなに悲しいの?
悲しいはずなんてないのに……そんな気持ち持ったらいけないのに……
絶対に許さない、許しちゃいけない
そうお母さんに誓ったのに……
近づく事も何か話しかける事も出来ず、ただそこで呆然と立ち尽くすしか出来ない……
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