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あーあ
本当なら身内に彼を紹介する時ってみんなどんな気持ちなんだろうな
きっと幸せいっぱいで真っ赤になりながら紹介するんだろうな……
この状況はそれとはだいぶ違うけど、でもね千裕さんを彼として紹介出来る喜びは感じてるよ
こんな状況でもやっぱり嬉しいし、少し照れくさくてくすぐったい感じがするもの
とりあえず千裕さんを彼として紹介し終わりホッと一息つくと
「やっと俺の出番が来たな
もう待たされ過ぎて自分から名乗り出るとこだっただろ」
千裕さんは意地悪そうに笑って言うと、私の頭をポンと撫で一歩前に出た
「初めまして、上杉と申します
花音さんとは結婚を前提にお付き合いさせて頂いてます
初対面で病院にまで着いてくるのは失礼かとは思いましたが、私がどうしても会って伝えたい事があったので連れてきてもらいました」
そう言うと一度言葉を切り私を見てニコッと微笑む
その笑顔にキョトンと首を傾げると、もう一度、今度は慈しむ様に微笑んで……そしてすぐに真剣な顔であの人に向き直った
「確かにどこにでもいる普通の子供時代を過ごしてきたとはお世辞にも言えない過去かもしれません
だけど俺はそんな彼女の辛い過去さえ愛しくて仕方ないんです
どんな過去だろうと花音が歩んできた道程だから……
だから花音にはちゃんと過去を受け入れて、その上で丸ごと俺に愛される覚悟を持ってもらいたい、そう思ってます」
最後の言葉はまるで私に問いかける様に、ゆっくりとそして優しく紡がれた
千裕さんのこの言葉を、私以外の3人はそれぞれに何かを思い詰める様な表情で静かに聞いていた
私は……
千裕さんに丸ごと愛される覚悟……
そんな図々しい覚悟を私が持ってもいいの?
私、何も持ってないのに……本当に本当に私でいいの……?
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