第1章

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 でもさっき見たところ、絆創膏の下からは膿が垂れていた。きっと傷口に絆創膏を付けただけで済ましたのだろう。  化膿した傷の手当てをするくらい、詮索には入るまい。  僕は絆創膏を剥いで、下の傷を露出させた。  思った通りその大きな擦り傷は、すっかり化膿して何か不気味な汁を垂らしていた。  ずぼらだなあ。せっかく顔が可愛いのに。 「いつもすみません。世話ばかりかけてしまって……」  化膿した傷に消毒液がしみるらしく顔をしかめながら、彼女は申し訳なさそうに詫び入った。 「いいよ、気にしないで。傷の手当ては日課みたいなものだから」  消毒液で膿を拭い、ヨードチンキを塗って新しい絆創膏を貼ると、とりあえず大丈夫そうな感じにはなった。 「他にどこか傷はないの? どうせなら全部やっちゃうよ」  なんかもう傷の手当ならどんとこい的な気分になって聞いたところ、彼女はそうですね、と呟いた後制服のスカーフをほどき、ファスナーを下ろして白い肌を露わにした。  白いキャミソールと、それに透けるピンク色のブラジャー。細いのかと思っていたが、意外と肉付きがいいのが分かる。  そして何より、肩に付いた大きな痣。  少し触れただけで痛そうに顔をしかめる。折れてはいないようだが、これは軟膏では間に合わない。 「氷、持ってくるね」  そう言って台所まで行き氷を探したが、こういう時に限って氷は見つからず、代わりに水を入れた洗面器とタオルを持ってきた。 「とりあえずこれを載せてれば、まあ、ちょっとは良くなると思うから。寒そうな格好で申し訳ないんだけど」 「そんな、ありがとうございます」  ぺこりと頭を下げる。  ……あんまり屈まないでほしいんだけど。その格好で。 「近江さん、顔が赤くないですか?」 「……別に」  僕は苦し紛れに窓を開けて涼風を入れようとしたが、そういえば雨戸が閉まっていたんだった。  一人で気まずい。かっこ悪い。 「……良かったら夕飯、食べていってよ。すごく美味しいってわけではないけど、そこそこのご飯は提供できると思うから」  僕は誤魔化す気が見え見えの、その場しのぎの提案をしたが、彼女の方は気にした様子もなくはい、と笑顔で答えた。
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