第三章 メラル

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1 通称掃き溜めの街、元を辿れば地下鉄用トンネルだったと言われている。 誰が、一体何の目的で、いつ、その起源は誰も知らない。 だがそんなものは些細な問題で、実際にこの街には老若男女合わせて約五百人もの人達が暮らしている。 そしてレールを辿って行けばいつか第二、第三の掃き溜めの街へと辿り着くだろう。 余談ではあるがジオフロントトーキョーは恭介が掃き溜めの街で暮らす人々の生活を参考に企画立案したのが計画の端となっていたりする。 勿論そんな事実背景があったことはおろか、その存在すら優斗や咲は認知していない。 とにもかくにも世界にはそんな生活をしている人間が考えていたより遥かにいるということで、とてつもない衝撃を受けたのがつい数日前のことだ。 たいして意味があるとは思えないバリケードに囲まれた決して安全とは呼べない生活空間。 そこはもっと張りつめた空気であって然るべきだと優斗は思うのがーー住んでいる人達は至って気楽なものだった。 手作り感溢れる公園へと改造された一角でこんなことをしていていいのかと天を仰ぐ。 空はおろかただの鉄の壁でしかない天井から視線を正面に戻すと中々にシュールな光景が広がっていた。
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