第三章 メラル

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実際問題、それぞれ一度ずつクリーチャーと単独での戦いにおいて低能力者である優斗とライラが無傷で切り抜けられたことはない。 お互いを思いやる持ちつ持たれつの関係と、大部分は運に恵まれて今がある。 実力でもぎ取ってきた勝利ではないと優斗とライラは重々承知しているので慢心するということはない。 セオリー通りに行くならば二人は絶対にペアを組んで戦うべきだ。 それだけで生存率は二倍にも三倍にも跳ね上がるだろう。 だがそれだと他の場所で戦っている人達はどうなるだろう? この街には頼りになる軍隊どころか戦える魔装士すらいない。 (二人で固まって各個撃破していくか、一人一殺で効率を重視するか……いや、そもそもライラが協力するか?) 咲がこの街を守る為に戦っているという事実だけで、それは優斗にとって十分すぎる戦う理由というものになる。 だがライラは違う。 生まれ育った新東京にさえあっさり見切りをつけた彼女が掃き溜めの街の為にわざわざ危険を犯す理由がどうしても見当たらない。 そんな胸中を見透かしたようにライラが言う。
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