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「私は右、あなた左。中央で合流しましょう。お姉さんがオーバーアシストを使えたとしても魔装が使えないのならクリーチャーを倒すのは難しい」
以前までの彼女なら他人の為にリスクを犯すなんて真似は考えられなかった。
恐らく今この場にだっていなかっただろう。
変わり始めようとしているライラの邪魔をする理由も意味も優斗にはなかった。
だからどういう風の吹き回しだなんて野暮なことはもう言わない。
「……分かった。でも無理だけはしないでくれ」
「あなたも……気をつけて」
今度こそ優斗は走る足を驚きのあまり止めてしまった。
心なしか頬を赤く染めていたような気がするライラは直後には魔装を纏い、凄まじい速度でクリーチャーの元へ駆けて行ってしまっており、表情を確認することは既にかなわない。
置いてきぼりをくらった格好になってしまった優斗はやがて先の怪奇現象を空耳だと自己完結させた。
それまではどこか年頃の少年らしく浮わついたところがあったが、されど優斗も魔装士の端くれだ。
戦場に近付いてくるに連れ否が応にも戦士の顔付きへと変わっていく。
そこは初めてみる本物の戦場だった。
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