第三章 メラル

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優斗が"人の死"に最も肉薄したのはミノタウロスと新東京最強の魔装士と名高かったアベル=ミュラーの一騎打ちの時だろう。 しかしあの時でさえ優斗は戦場に立っていた訳ではない。 だがここにはその"人の死"が広がっている。 苦痛に絶叫し、のたうち回る者。 誰かの名前をうわ言のように呼び続ける者。 そして……もう心臓すら動かしていない者。 授業で嫌というほど人が死ぬシーンを繰り返し見せられてきたのは今この時の為だと唐突に理解する。 しかしマインドコントロール関連の成績に関しては特に優秀だった優斗でも戦場の凄惨さはとても耐えられるものではない。 たまらず胃のからせり上がってくるものを地面にぶちまけようとした時だった。 ウイイイイイと奇声を発しながらこの目も背けたるなるような残酷な世界を演出しているクリーチャーの姿を視界に捉える。 燃え盛る戦火に反射して輝きを放つ青い鱗を持ち、魚と馬を足して二で割ったような細長い頭部。 二足歩行ではあるが腕はなく、その位置からはいそぎんちゃくの触手のようなものが伸びていた。
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