第三章 メラル

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死にたくない、生き残る為なら何を犠牲にしてでも、どんなに不様でみっともなくても生に執着したい。 それが臆病でちっぽけな己の本当の姿だと。 そういう意味で優斗は何もかもが正反対の人間だった。 思い返せば初めて出逢った時からそうだ。 他人の為に首を突っ込むことに躊躇しないお節介野郎。 どれだけ冷たくあしらってもめげない無駄に意固地なところ。 そんな彼が何気なく放った言葉は今も胸の奥でしこりとなって残っている。 『お前さぁ、何でそこまで感情を押し殺そうとする訳?人間はどんなに気張ったって機械人形にはなれねぇぞ。怖いなら怖い。寂しいなら寂しい。楽しければ楽しい。それでいいだろ?何て言うか今のライラは見てる方も苦しいんだよな』 この男には見透かされている。 そう確信した。 きっと優斗は自分がそんなことを言ったことを覚えてすらいないだろう。 その件以降、ライラはそれまで以上に優斗を避けるようになった。 怖かったのだ。 踏み込まれ、弱さを露呈してしまうことが。 もうその頃には引き返せないところまで来てしまった自覚があったから。
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