第三章 メラル

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正確に言えば何もできない。 余りにもレベルが違いすぎる。 彼等の目には光の残像に翻弄されている化け物しか映っていなかった。 掃き溜めの街の戦闘要員は魔装士でなくとも全員がインフラクション移植を受けた強化人間だ。 実戦経験もずっと豊富な彼等の中にはライラと同じレベル3の者もいたが、それでもライラの動きを捉えられない。 その姿は正しく雷煌。 ライラは自分でも気付かぬ内に速度という一点に限ってのみ人跡未踏の『レベル8』の領域へと踏み込もうとしていた。 しかしそれが誰も予想していなかった形で牙を向く。 オーバーアシストとは人間が三〇パーセントしか使用していない脳のリミッターを外して力を引き出そうというものだ。 何故人間は潜在的に持っているはずの力を七割も抑えているのか。 答えは肉体が自分自身の力に耐えきれず壊れてしまうからだ。 勿論それが分かっているのだから当然対策は講じている。 特殊な薬品を定期的に注入して内側から徐々に強靭な体へと作り変えていく、細胞レベルの肉体強化プログラムが体の成長期に合わせてじっくり行われる……はずだった。
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