第三章 メラル

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3 池神タクト(いけがみ)、早乙女薫(さおとめかおる)、橘ユリ(たちばな)、ナナシの四人は掃き溜めの街に通じる地下道の一つにいた。 四人を目にした者がいればこの場にそぐわないちぐはぐな印象を受けたに違いない。 池神、薫、ユリの三人は学生服に刺繍された桜を模したエンブレムからも同じ学校の学生であることが分かるが、そもそも学生がこんな危険な場所にいること自体が不自然だった。 さらに異質さを際立てているのが一人バイクに乗っている訳でもないのにフルフェイスを被り、やたら近未来的なパワードスーツを着て完全武装している男か女の存在だ。 髪の毛を痛めつけているとしか思えない金髪に、ジャラジャラとつけられたピアスに指輪にネックレス、身だしなみだけで退学処分にされてもおかしくない出で立ちをした薫から出てきたのは流暢な関西弁だった。 「ここが日本なんか?なんか思うてたより殺風景なとこやなぁ」 その完璧なイントネーションは努力の賜物だ。 薫はモテたい一心で関西弁を習得した。 薫とはクラスメイトであり無二の親友でもあるタクトは関西弁をマスターしたところでモテるようになるとは到底思えなかったが、これが意外にも女性陣には好評だったりするのだから侮れない。
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