第三章 メラル

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「バーカ。どう見ても使われなくなって久しい地下道だろうが。殺風景なのは当たり前だ」 ヘルメット越しのくぐもった声からではやはり性別の判断はつかないが、粗暴な言葉づかいはおよそ女性だとは思えない。 タクト達にとっても謎の人物。 唯一分かっているのは彼ーーもしくは彼女ーーの名前がナナシだということだけだ。 いや、その名前すら偽名だろうということで残る三人の間で意見が一致しているぐらいである。 「……『導きの光』は確認できませんね。座標が少しずれているのでしょうか?」 可愛らしく小首を傾げたのは紅一点のユリ。 スラリと伸びた手足に艶のある黒髪をポニーテールにした彼女は女性でありながら四人の中で一番背が高かった。 だからと言って女性らしさが欠けているという訳ではなく、モデルのような美しさがある。 「気にせんでええって。色々とこっちじゃ勝手が違うやろし」 ナナシと口論していたはずの薫がすかさずフォローを入れる。この辺りはさすがにモテる為に努力を厭わない男である。 「もう一度跳びますか?」 「いんや、せっかくやしちょっと歩こうや」 その発言にナナシが再び突っかかっていく。 薫とナナシの仲が悪いのは今に始まった話ではない。
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