第三章 メラル

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故にタクトもユリも二人を止めようとさえしなかった。 それが無駄だと悟っているのも勿論ある。 だがタクトに関しては初めからそんな調子だった。 二言目には面倒臭いという口癖が出てしまうタクトはさも当たり前のように喧嘩している二人を追い抜き、先へと進んでいく。 そのタクトの横にいつしか移動してきたユリが漠然とした疑問を投げかける。 「池神君は信じてる?」 「神託か。俺はそっち系には疎いからな。でも任務だっていうならそれをこなすだけだ。それ以外はどうでもいい」 「まだ生き残っているといいけど」 ユリが拾い上げた"何か"は風化していたのか、持ち上げた瞬間サラサラと砂となって風に流されていく。 タクトはその様を見て何故か妹が自分の為に初めて作ってくれたクッキーを思い出していた。 あの時のクッキーもつまんだところからボロボロと崩れ去ったものだ。 今でこそ食べれるレベルには上達したがあの頃は本当に酷かった。 洒落にならない罰ゲーム並みと言っても過言ではない。 勿論、口が裂けても本人にそんなことは言わなかったが。 そんな苦い思い出に浸っていると、ナナシのくぐもった声が耳に届いた。
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