第三章 メラル

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どうして俺がそんな面倒臭いことをと思わないでもないタクトだったが、実は先輩でもあるユリに面と向かって頼まれれば嫌とは言えなかった。 「ったく、お前らの目は節穴か?よく見てみろ……あの女普通に可愛いぞ。大事なのは顔だよ顔」 ガッ!!ゴッ!!メキッ!!というのは男達に拳骨が落とされた音だ。 (うおおおおお!?いてえええ!!まさかフルフェイスはこれを見越してなのか!?) 痛みで地面をごろごろと転がるタクトと薫。 拳骨を落としたユリでさえ赤くなった拳を痛そうにさすっている中、ナナシだけがケロッとした様子で「まぁ可愛いと言えば可愛いのか……好みじゃないが」と呑気に呟いていた。 「どう見てもアレが『導きの光』ですよね?次ふざけたら全員あの化け物の前に放り出しますよ?」 問いかけるような口調が余計に怖い。 四人の間に明確な上下関係はないが、今は間違いなくユリがリーダーだろう。 フルフェイスでナナシの表情は窺い知れないが、殴られた薫だけはそれでも楽しそうだった。 要は女の子とスキンシップを取れるだけで満足なお年頃なのだ。 「でも正直想像以上やったな。あんな化け物の前に放り出されたら一分ともたへんで」
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