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「私だってまともに戦って勝てる気は全くしませんよ」
「バックアップ要員に戦闘技術はいらない」
ナナシだけやや回りくどい言い方なのは素直に勝てないというのはプライドが許さなかったのだろう。
自然と三人の視線がタクトに集まってくる。
「……やっぱりそうなりますか?」
「適材適所というやつです」
「池やんやったら大丈夫やろ?」
「むしろこいつはそれしかできないだろ」
タクトは面倒臭そうに髪をボリボリと掻いた。
元々好き勝手にはねまわるワガママな髪質がこの地下道に入ってからいつもの三倍増しでうねっている。
「面倒臭えなぁ。そりゃいざとやったら仕事だしやるけどよ。お前らも援護ぐらいなら出来るだろ」
「……」
「……」
「……」
少し離れた位置から奏でられる戦闘音がタクトの頭の中ではバラードのように流れていた。
「ふざけんな!!俺だって勝てないっつうの!!手伝えよ!!訴えるぞ!?」
さすがに大声を上げるのが面倒臭いと言っている余裕はなかった。
何せ命が懸かっている。
タクトはその後も命の尊さとは何かという熱弁をふるったが、三人の心に響くことはなかった。
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