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少女が膝から崩れ落ちると同時に切迫した薫の声が飛ぶ。
「池やん!!」
「分かってる!!」
「待て!!あいつ何かするつもりだ!!」
ナナシの言う通り少女は諦めていないのか、ずっと庇っていた左腕を動かしていた。
少女の体を覆っていた光が拳の一点に集中されていく。
その表情には見覚えがある。
タクトは思わず叫んでいた。
「クソッ!!あの野郎!!」
アレは諦めていない者の顔ではない。
その逆、全てを諦めて投げ出した者だけが見せる悟りの境地だ。
「間に合ええええええええ!!」
ブレザーの内ポケットから取り出したのは何のへんてつもないシルバーカラーの自動拳銃。
迷いなく引かれた引き金。
銃口から発射されたのは銃弾ではなかった。
それは目に見えない"何か"。
だが確かにその何かは単眼の巨人に直撃し、降り下ろした拳の軌道を僅かに反らしていた。
直後、強烈な閃光がタクト達のいる場所までも支配して視界を根こそぎ奪う。
視力が回復した時、最初に飛び込んできたのはペタンとお尻をつけた体制で呆けている少女の姿だった。
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