第三章 メラル

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座り込んだ少女の前から真っ直ぐに車のブレーキ痕のような跡が遥か先まで軌跡を残し、その終着点では煌々と頭部のない巨人が燃えていた。 「なんて威力だ。どっちが怪物か分からないぞ」 唯一スモークのかかったフルフェイスのおかげで一部始終を捉えていたと思われるナナシが珍しく賛辞とも取れる評価を出す。 「これが導きの光の力」 ユリの声にも熱がこもっていた。 だが薫とタクトの見解は違う。 「池やん、あの子今……」 「あぁ。本人も分かってたはずだ。零距離であんな技を使えば自分もタダじゃ済まないってな」 そしてタクトが化け物の拳を弾いていなければ拳とぶつかったエネルギーは行き場を失い間違いなく術者もろとも吹き飛んでいたことだろう。 死なばもろとも。 同い年ぐらいに見える少女が見せた覚悟の重さに戦慄を覚えずにはいられない。 これが『こちらの世界』の住人。 怪物と死が常に自分に隣り合わせる世界。 (俺達とは生きている世界が違いすぎる。これがこっちの常識だって言うのかよ) 疲労困憊しているだけで動けないのだろう。 目立った外傷は見受けられない。
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