第三章 メラル

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時間はかかるだろうが、その内動けるようになるだろうと考えていたタクトの目の前で少女は立ち上がっていた。 覚束ない足取りで目指してくるのは紛れもなくタクト達が身を潜めている地下道の入口だ。 我に返ったのはほぼ四人同時だった。 「ど、どうすんねん!?」 「導きの光との直接的な接触は禁止事項です!!」 「跳べ!!」 タクトの判断は鋭く、そして的確だった。 直後、体を嫌な浮遊感が包み込む。 この度にタクトはいつも同じ感想を抱く。 これだから『瞬間移動』は好きになれないと。 4 「化け物が」 それが何の意味もなさないと知りつつ、咲は悪態をつきながら全弾撃ち尽くしたショットガンを投げつけて逃げ出した。 コウモリの持つそれに似た羽で狭い地下空間を飛び回り、線の細い体からは想像もつかない膂力で繰り出される腕の一振りで人間がなぎ払われる。 闇に溶け込んでしまいそうな漆黒の体に赤い円錐形の三つの目が次なる獲物を求めて怪しく光を放つ。 悪魔のような見た目に恥じない恐ろしい強さだった。 味方は総崩れ。 劣勢どころか敗北濃厚な状態だが、手持ちの武器も無しにこの場に留まる意味はさらにない。
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