第三章 メラル

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自分で評価するのもおかしな話だが、正義感に溢れ、魔装という特異な才能にこそ恵まれなかったが、それで引け目を感じることもなければ相手が男だろうが魔装士だろうが、物怖じしない性格だったと思う。 友達も多く順風満帆な人生が一変したのはあの日。 夏休みに入り、花火大会、プールに夏祭り、学校の課題すら友達と一緒にさっさと終わらせてしまった咲は特に仲の良かった友達四人とファミレスに集まりドリンクバーだけで数時間粘っていた。 他愛のない会話はやがて夏の風物詩とも言える怪談話になり、いつしかクリーチャーの話へと変わっていく。 クリーチャーを見学できる展望台があるから行ってみようという流れになったのはある意味必然だった。 行きのバスでは女子高生らしく恋バナになったことまで鮮明に覚えている。 貸し切り状態の展望台でキャーキャー騒ぎながらも咲達の顔にはまだ笑顔があった。 それは彼女達が全員魔装の素養を持たない一般人だったからというのもあるだろう。 例えば動物園の檻に閉じ込められたライオンに恐怖しないのは、絶体安全と銘打たれているからだ。 だから誰一人予想すらしていなかった。
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