第三章 メラル

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咲の思わず漏れた言葉にドクターは特に反応を示さずむしろ使い心地を確かめるように手にした武器にチラリと視線を向けて言う。 「そいつは止めとけ。威力は申し分ないが、耐熱処理に問題がある欠陥品だ」 「……具体的に言うと?」 「熱くて持てん」 咲は無言で手にしていた火炎放射器を戻す。 開発研究者が威力を追求する余り全く使い物にならなかったこの手の武器はごまんとある。 たまたま使ってみた銃のリコイルショックが激しくて両肩脱臼なんてのは珍しい話ではない。 慣れた手つきで一服し始める咲。 ただ悪戯にニコチンを補給している訳ではない。 考えているのだ。 どうすればあの化け物を殺せるのか。 「……出し惜しみしていられる状況でもないか」 「ほう。そいつを使うのか」 咲が選んだのは動物の骨を加工した刀身に柄の部分に布を巻き付けただけの原始的な武器だった。 他にもいくつか細々としたものをポケットの中へ押し込んでいく。 咲がまぁこんなものかと言って準備を終えた頃には興味深げに見守っていたドクターの顔から笑顔は消えていた。 「あまり派手にやるなよ」
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