第三章 メラル

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もがき苦しみ助けを請うように伸ばされた手を、慈悲の欠片もなく拾い上げた警棒で弾く。 『ギャアアアアア!?』 「生憎と私は天国や地獄という世界を信じてはいない。死んだ先に待つのは無だ。だがそれでは貴様が殺してきた者達が報われないだろう?だから私は可能な限り苦しませることにしている。現世で少しでもその罪を洗い流していけ化け物」 誤ってうっかり殺してしまわぬよう、いたぶるように電撃を放っていると、遂にクリーチャーが崩れ落ちた。 だがまだ死ねない。 それはある意味このクリーチャーの強靭さを証明していた。 「あぁ、今すぐ息の根を止めてしまいたくなるほど貴様の声は耳障りだ」 カチッと警棒の電力を最大出力にして、左腕を振り上げる。 だが警棒が振り下ろされることはなかった。 いつ移動したのか、咲の手首を掴む優斗の姿が目の前にあった。 強く、真っ直ぐすぎて眩しい光を宿した瞳を向けてくる弟がいつのまにか自分の背を追い抜いていたことに今更になって気付く。 咲の眼前で優斗の漆黒の魔装刀が地獄の苦しみからクリーチャーを解放する。
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