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ただ待っているだけでは安寧は訪れない。
その事実はそう簡単に受け止められるものではないだろう。
仮にアリスという唯一無二の母体を倒しても残ったクリーチャーを地道に駆逐していくしかなく、その道は長く険しすぎる。
咲には少し頭の中を整理する時間が必要そうだった。
そしてそれは先ほどから釘を刺すようにライラから視線を向けられ続けている優斗にも同じことが言える。
出来れば何かの間違いであってほしい。
しかし導き出された結論には一切の異論を挟む余地がないほどに整合性が取れている。
(新東京が襲われたのは俺かライラのせいだっていうのかよ。俺達の何かがクリーチャーを引き寄せている)
つまりはそういうことだ。
守る為に戦っていたと思っていたのは自分だけで、そもそもの元凶は自分にあったのかもしれない。
その過酷な現実を、最悪な結論を優斗は受け止めきれずにいた。
「優斗」
「あ、あぁ。咲姉、俺はちょっとこいつと話があるから先に戻っててくれる?」
「分かった」
特に疑う素振りも見せずに咲は俯きながら歩いていく。
恐らく今の話を必死に整理することで余裕がないのだろう。
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