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二人並んで歩く掃き溜めの街はまだ喧騒に包まれており、大多数の人間が慌ただしく行き交っていた。
亡くなった遺族や友人の亡骸を沈痛な面持ちで運ぶ者達。
バリケードの補修に向かう者と、次なるクリーチャーの侵入に備えて巡回する者。
やがて半歩前を歩くライラは小さな公園に入っていく。
歩いている時から二人はずっと無言のままだった。
ある程度対ライラへの沈黙耐性のある優斗にとってもこれほどまでに空気が重く、苦しい沈黙はなかったと思う。
並んでベンチに腰掛けてようやく口を開くまでにさらに十分の沈黙があった。
「……この街を出るわ」
「一応理由を聞いといた方がいいんだろうな」
「あなたが気付いている通りよ。それがアリスかはこの際置いておくとして、この一連の事件にはクリーチャーを操る黒幕がいる。そいつの狙いは私かあなた。そしてこれは驕りでも何でもなく狙われてるのは私だと思う。だから予想を確信に変える為にもこの街を出るのは私だけでいい」
「ふざけるなよ」
寸前まで悩んでいたことが嘘のようにどうでもよくなった優斗はそんなやり方しかできないライラに本気で怒っていた。
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