第三章 メラル

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その剣幕に怯んだのかどうかはともかくライラは今にも泣き出しそうな顔をしていた。 「咲姉の前で言い出させなかったのは、俺がこの街に留まることで生まれるリスクがあれば、俺も一緒に追い出されると思ったからか?それとも自分一人いなくなれば何の問題もなくなると考えたらか?この際だからはっきり言っておく。勝手に三行半突き付けてるんじゃねぇよ」 「……私が本当はさっきの戦いで死んでいたはずだったとしても?」 「どういう意味だ?」 「うまく説明できない。ただ誰かが私を観察していて今回は何故か助けてくれたとしか言えないわ。案外私が苦しむ様子を見て楽しんでいるんじゃないかしら?」 高坂ライラとはこんな自虐的に笑うような女の子だっただろうか。 断じて違う。 彼女は優斗が気付いていないとでも思っているのだろうか。 ずっと自分が震えていることに。 怖くて、恐くて、本当は仕方がないのに自分一人が犠牲になることでこの街から危険が去るかもしれない。 そんな決断に至った理由は新東京での一件をずっと悔いてきたからだ。 自分が生き延びる為に切り捨てた絆。
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