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「やめて」
弱々しくとも確かな拒絶の言葉。
だがここで引き下がってしまえばライラはどこか遠いところへ行ってしまう気がした。
「これ以上優斗に優しくされたら、私はーーッ!?」
考えての行動ではない。
気付けば優斗は華奢なライラの体を抱き寄せていた。
「頼りないのは自分が一番よく分かってる。だけど俺はもっと強くなるから。お前が一人で何もかも抱え込むのが馬鹿らしくなるぐらい強くなるから。だから……俺の隣からいなくならないでくれ」
告白ですらない。
こんなものは何の根拠もない情けないただの我が儘だ。
それでも強張っていたライラの体からはゆっくりと力が抜けていった。
「あの時の話覚えてる?弱っている時に抱き締められて優しい言葉の一つでもかけられたらグラッとくるものだってやつ。何となくだけど分かった気がする」
「おう。よく覚えてるぜ。抱き締められるのは絶対嫌。それなら知らないままでいいとまで言われたからな。あれは正直かなり凹んだ」
申し訳なさそうに見上げたライラは優斗が笑っているのを見て拗ねるようにプイッと顔をそらした。
「本当に嫌な人」
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