第三章 メラル

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たった一発でノックダウン一歩手前の状態。 グラグラと揺れ続ける視界の中で満足に魔装すら纏えないライラがそれでも保坂に向かっていく姿が見えた。 ペシッと力なく保坂の顔面に入った拳。 逆にドアをノックするように優しく叩かれた裏拳はドゴッという嫌な音を響かせていた。 計算されたように殴り飛ばされたライラをどうにか上体を起こして受け止める。 折れてはいないが、ライラの鼻からは垂れるのではなく流れるレベルで鼻血が出ていた。 「脆いな。それに可愛い顔が台無しだ」 (何故だ?保坂はレベル3の魔装士じゃなかったのかよ。なのにどうして……) さすがというべきかライラはその答えを既に導きだしていた。 「先生は『メラル級』ですね。殴った感触ですぐにクリーチャーだと分かりました」 「素晴らしい!!確かに僕はメラル級であるとも言えるしそうでないとも言える。しかし惜しいな。そもそもメラル級なんて曖昧なものは存在しないのだよ……あぁ、つい無駄話が過ぎたようだ」 空から地上へと駆け抜ける雷鳴に初めて保坂がバックステップを踏んで回避行動を取る。
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