第三章 メラル

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それほどまでに保坂の実力は抜きん出ていた。 「咲姉!!」 ようやく体が安定してきた優斗が加勢しようと動き出したのは、保坂の膝蹴りが咲の鳩尾に突き刺さった時だった。 「ウグッ!?」 呼吸の止まる腹部への衝撃は痛覚遮断している魔装士や強化人間にとって最も有効な攻撃手段だ。 そのあたりを保坂はよく分かっている。 さらに上体の浮いたところにだめ押しの前蹴り。 蹴り飛ばされた咲と優斗はもろにぶつかって二人一緒に地面を転がっていく。 「くそっ!!どけっ!!」 優斗を押し退けて立ち上がった咲を見る保坂の顔は嗜虐的に歪んでいた。 そして悪魔の一手が打たれる。 最も効果的で、残酷で、救いようのない真実を。 「あまりにも憐れな咲君に僕から一つプレゼントを上げよう」 天井を突き破り姿を現したのは悪く言えば何処にでもいるようなフェメラル級クリーチャー。 特徴らしい特徴と言えばカブトムシのような角がバッタみたいな頭部からちょこんと生えている程度。 いくら疲弊しているとはいえキメラクラスとの連戦をくぐり抜けてきた後では拍子抜けもいいとこだ。
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