第三章 メラル

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しかし咲の反応だけが優斗とライラとは違った。 キリッとした目を限界まで見開き、咆哮する。 「お前かあああああ!!!!!!」 「ダメだ!!」 クリーチャーが突き破った天井からバラバラと鉄骨が降り注ぐ中を特攻しようとする咲を羽交い締めにして必死に止める。 ライラが一緒に捕まえていてくれなければきっとふりほどかれていたであろう咲から徐々に力が抜けていった時にはもう保坂の姿は忽然と消えていた。 「全部あいつが仕組んだことだった」 それだけで優斗は全てを悟った。 五年前、何人もの人生を大きく揺るがし、兄弟の絆さえも切り裂いたあの事件は不慮の事故ではなかったことに。 6 一人で殺らしてほしいという咲の懇願を今度は優斗にも止めることはできなかった。 保坂が用意していたジョーカーは五年前に重傷を負わせ、友達の命を奪っていった咲にとって因縁の相手。 だがそれは保坂にとって使い捨ての手駒にしか過ぎず、本当に憎むべき相手は別にいた。 しかもそいつはずっと近くに。 それは咲一人に当てはまることではない。 むしろ魔装科に所属していた優斗の方がさらに近い位置にいたはずなのだ。
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