第三章 メラル

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心中を察しているだけにかける言葉が見つからず、視線を隣に移すと止まらない鼻血を袖で拭っているシュールな絵が飛び込んできた。 「鼻つまんどけよ。出血多量で死ぬぞ」 「ハンカチぐらい出せないの?」 「今時の男子高校生はハンカチなんて標準装備してねぇんだよ。ていうかそういうお前も持ってないんだろ」 「……落としたのよ」 「変な間があったぞ」 「しつこい男は嫌われるわよ」 「もう騙されない!お前のそういう助言は本からの引用に決まってるんだ!」 「……ふっ」 「鼻で笑うなよ!?でも随分と表情豊かになってきてお父さんは嬉しい限りです!!」 「鬱陶しい。暑苦しい。うざい。あと三メートル私から離れなさい」 「相変わらず言葉に容赦がなさすぎる!ったく、あの時のしおらしいーーブフッ!?」 言葉以上に容赦なく鋭い左ストレートが顎を捉え、脳を激しく揺さぶる。 蓄積されたダメージの深さにしばらくは立ち上がれないだろうなと思う。 「それ以上喋ったら殴る」 「もう殴ってるから」 「訂正する。それ以上喋ったら殺す」 「すげえ。全然冗談に聞こえない」
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