第三章 メラル

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「リスクに対してリターンの不確定要素だけが大きすぎるけれど一考する価値はありそうね」 優斗は勿論明日花達の生存を本気で信じているし、逆に保坂に繋がる手がかりが本当に見つかるとは思っていない。 確定しているリスクに対してあくまで行ってみなければリターンが得られるかは分からない無謀な賭け。 そして優斗は決断する。 「ライラの言う通りだ。だから二人は付き合わなくていいよ。新東京には俺一人で行くから」 「それ、本気で言っているの?」 この提案において最大の障害は咲になると優斗は勝手に思い込んでいた。 保坂をきっと地の果てまでも追いかけて殺したいと思っているはずだから。 しかし咲より怒っている人物がそこにいた。 「自分で言ったことをもう忘れたの?」 「えっと、ライラさん?何をーー」 「あぁそう。本気で忘れている訳ね」 「げふっ!?」 思わず変な声が出たのはライラの足が男の子の急所を踏みつけたからである。 いや、もしかしたら踏み潰されているかもしれない。 咲もドン引きするぐらいどす黒い障気を纏うライラはまるでゴミを見るような目で優斗を見下していた。
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