第三章 メラル

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「ちょ、ちょっと待て!何でお前がそんなに怒ってるんだよ!俺はただ無用なリスクをお前まで負う必要はないと思ってーー」 「そう言ってあなたの方から私の隣からいなくなるのね」 「あっ……悪い……俺……」 「別にいい。確かにイラッとはしたけれどあなたのそういう優しさはそんなに嫌いじゃない」 スッとのしかかって重みが消え、また優斗はライラにおんぶされていた。 これで二度目、しかも今度は咲の見ている前というのがより情けない気持ちを増長させてくる。 「……優斗。彼氏としてもう少し頑張ろうな」 「止めて!その優しさは痛いだけだから!」 「そうです。止めてください。私達はそういう関係ではありませんから。不愉快です」 (え?違うんだ?) 偶然にも優斗と咲の心の声はシンクロしていた。 確かに付き合って下さいという言葉は使っていないが優斗の中でアレはそれに等しい言葉で、あのキスはその返事だと解釈していたのだが、ライラの中では違うらしい。 これはもうタイトルすら分からない例の本を読むしかないと密かに新東京での目的を一つ追加する。 そこにライラの考える付き合うという定義の答えが載っているはずだから。
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