第四章 そして世界は交わり始める

2/92
503人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
1 新東京の東都国立研究所地下へ建設されたジオフロントトーキョーのその一室。 地下故に窓はなく、文字通りの意味で息が詰まるプライベートスペースには寝袋が無造作に放置されていたのだが、今その寝袋は子猫達に独占されていた。 ちょこんと顔を出しては再び潜り込み、時おり狂ったように飛び出してくる子猫達は見ていて飽きない……なんてことはない。 いや、確かに最初の内は随分と癒されもした。 だがそれは明日花の精神状態が比較的平常に近かったからに過ぎない。 そして日に日にのし掛かる不安がある一定値を越えた時からアニマルセラピー効果は意味を成さなくなった。 原因ははっきりしている。 消息不明となった幼馴染みの安否だ。 かと言って無力な自分には何も出来ないというジレンマから脱け出せない。 ジオフロントトーキョーと地上を繋ぐ連絡路は二つ。 一つは避難してきた際に明日花達も使用したエレベーターだが、これはミノタウロスが研究所もろとも叩き潰してしまったので現在使用不可能になっている。 二つ目が地下を走る用水路へと続く道なのだが『ヤマタノオロチ』のせいでそれも難しい。
/318ページ

最初のコメントを投稿しよう!