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「あら?何か気になることでもあるのかしら?」
「あいつらは何を考えているのか僕にも分からない。だからだよ」
最低限の指示を出し、保坂はリラルダに体を預けて眠るように瞼を下ろす。。
皮肉にも、それは優斗が新東京をライラに背負われて脱出した時とよく似ていた。
10
「ぐああああ!!」
「くそっ!しっかりしろ優斗!!」
「お、俺より、明日花が特にやべぇよ。ぐっ!!」
全ての影が体の中へと戻った優斗は尚も押し寄せる苦痛に顔を歪めつつも明日花の心配をしていた。
咲からしてみれば危険なのは優斗も明日花も変わらない。
ライラに関しては命に別状はないが、動けるような状態ではなかった。
こんなときにあの人がいてくれればと心の底から思う。
ドクターは掃き溜めの街から新東京へ帯同してはいるものの、連れて帰ってくるには距離がありすぎた。
そんな悠長な時間が二人に残されているのかも分からない。
懐かしい声が聞こえたのはその時だった。
「医療班は負傷者の救護を急げ」
「どうして、あんたが?」
「何を呆けている。お前に怪我人が治せるのか?やれもしないことをウダウダ悩む暇があるなら体を動かせ」
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