第四章 そして世界は交わり始める

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影宮恭介。 咲と優斗の実の父親がそこにいた。 五年ぶりという歳月を挟んでいながら、再会を喜ぶ様子を微塵も感じさせない態度に、咲はグッと唇を噛み締める。 「……あんたに指図されるまでもない」 親子の縁を断ち切ったのは咲の方だ。 今も姉と呼んでくれる優斗とこの人は違う。 恭介の態度は至極当然のものだ。 今さら親の愛情に甘えようというのは虫がよすぎる。 期待してはいけない。 一度失ってしまったものは二度と戻らないことを咲は誰よりもよく知っているのだから。 11 (……大きくなっていたな) 遠ざかっていく娘の姿を恭介は誰にも気付かれないように見つめていたつもりだったが、どうやら息子にだけはバレていたらしい。 「おい……クソ親父。落ち着いたら咲姉としっかり話せ。今度は素直にな」 担架で運ばれてきた優斗はそれだけ言うとその話は終わったと言わんばかりに顔を恭介から背けた。 (見ていたことだけでなく、本心さえ見抜かれていたか) この息子は変なところだけ自分に似ているなと思う。 余計なことは言わず黙っていると優斗は顔を背けたまま言う。
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