第二章 離別と再会

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1 優斗がライラの助けを得て辛くも新東京を脱した頃、明日花はたった一人不気味なほどに静まり返った街中を走っていた。 彼女が一人だけなのは先に家族と合流できた恵恋には先へ研究所の方へ向かってもらったからだ。 一方で明日花は自分だけすんなりと事が運ばないことにも苛立っていた。 自分の判断で何処かのシェルターに避難してしまったのか実家は既にもぬけの殻。 だとすれば卯月と合流するのは非常に難しくなる。 何故なら新東京には大小合わせて三百以上もの避難用シェルターがあるのだ。 かの幼馴染みは『三歩歩けばシェルターにぶち当たるような街』と言っていたが、今になってその通りだと思う。 そもそもこの都市に住まう人間の中に一体どれだけシェルターの役割を真に理解できている者がいるのだろう。 クリーチャーにとってシェルターなど、土を掘って作られた防空壕以下の性能でしかないのだと理解しているのは恐らく限りなく少数に違いない。 ならば何故そのような無用な長物にわざわざ国税を割いてきたのか。 言うなれば心の保険といったところだろう。 万が一、結界が破られたとしてもシェルターに入れば安全と思わせることで民衆の不安を和らげるように誘導しているのだ。
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