「懐中時計」

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 親父の背中を見るのが好きだった。  新潟の片田舎で時計店を営む、寡黙で職人気質の頑固者。  口を開く時は語尾に必ず「バカヤロウ」と怒鳴り声がつく。  そんな時計店の長男として産まれた俺にとって、親父の背中はとても大きくて、小さな頃は憧れていた。  なにも言わないが、俺がガキの頃に出された『将来の夢』と題された作文で「将来の夢は親父の時計屋を継ぐことです」と発表した時は、大きな手で頭を撫で回された。  大きな手で小さな時計を組み立てていく姿は、格好良かった。   親父が作った時計が色んな人に時間を知らせて、みんなが助かっている。  母が俺に自慢するように言ったから。  だから、俺はそんな父親の姿を絵に描いた。
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